マイブーム

 ファーストアルバムを出し(セカンドはいつだ?笑)、あちこちのメディアにお邪魔した頃、特にラジオで、定番の質問としてよく聞かれたのが「最近のマイブームは?」「ハマっているものは?」だった。台本や事前のアンケートシートに、トークのネタとして書かれていることも多かった。
 それを受けて、しばしば辟易したものである。またそれっスかぁ、っていう。
 マイブームなんて、そう頻繁に訪れるものじゃない。そして「ブーム」である以上、長続きしないのが常である。仮にその前後、何かにハマっていたとしても、大抵そういう話はすでに他所で喋っている。また同じ話をするのもナンだしなぁ…という気持ちが、ゲンナリ感を助長するのだった。
 「マイブーム」なんて話題自体、大したネタじゃない。例えどんな有名人のトークでも、リスナーは「この人のマイブームは一体何なんだろう、聞き逃したくない!」なんて風には、普通はならない。その程度の質問だ。トークをなるべく弾ませるためのホスト側の配慮、小さなきっかけに過ぎない。
 …なんて頭じゃ分かってたんだけど、だからといって適当に流すのも、当時はなんか嫌だったんだよな。値踏みされているような感覚があったし、もっと言えば、「オレ発信!」的な感覚を常に他人の倍くらい持っていなくては、的な気負いも無駄に多くあった。無駄に。
 それにしても件の話題を振られるたびにイチイチ気分を重くするのはいけない、ということで、時には東急ハンズなどに出掛け、興味をかき立てられるようなものを日がな一日探すようなことさえあった。いかにも本末転倒なわけで。
 自然体から溢れ出たわけでない、心から楽しんでいたとは言えないそんな小さなマイブームは当然、「ブーム」とすら言えない短いスパンで、さっさと通り過ぎていった。もちろん自分の中に根付いたものもあるけれど、ほとんどの物は、もう恥ずかしくて挙げるのも憚られる。
 …というようなことを、ひょんなことから見つけた「知恵の輪」を見て、イモヅル式に思い出しました(知恵の輪は昔も今も好きですけどね)。斜め上の自意識、とでも言うべきか。なんせ若かったなぁなんてしみじみ思う次第なのであります。
 自分語りの巻でした。