サッカー口調

 (淡々としたトーンで)
 10年以上前にね、Jリーグが華々しく開幕したときからずっと気になってたんですけどね、サッカー選手の多くがね、何故かこういう口調でね、ま喋ることが多いんですよね。最近でこそね、ま少なくなったかなとは思うんですけどね。
 例えば練習後のインタビューか何かでね、こんな感じとかね。
 「ま前回はね、あまり良い結果に終わらなかったですけどね、ま試合を通じてね、おのおの学んだことがあると思うんでね、ま次に最大限活かせるようにね、チーム一丸となってね、目標を持ってね、やって行きたいと思います」
 このとき基本的にね、インタビュアーからは視線を逸らしてね、遠くを見るような目でしゃべってね、それで「ね」の時にだけね、軽くうなずくような仕草と共に目を合わせる、っていうのが定番のスタイルでね。「ね」はむしろ「ねっ」でね。(わかるかなぁ?)
 あるコミュニティに属してるとね、先輩の影響だとかね、そこに漂う独特の空気みたいなものに感化されてね、みんなが似たような口調になっちゃうなんてことは、よくありますけどね。それにしてもね、いかにもスタイルを気にする近年の日本のサッカー選手然とした感じ、あまり良くない側面のニオイがちょっとね、わかり易く出過ぎじゃないかなんてね。ま、穿った見方だと言われれば、そうかも知れないですけどね。
 ただ礼節としてもどうかな、なんてね。インタビュアーに対して、口調は柔らかであるにせよ、「あれ実は割とタメグチ状態じゃんか」みたいなね。まそれはスポーツ選手に無意味なケンキョリズムを期する、年寄り臭い発想なんでしょうかね。
 俺もあの口調や仕草を真似ればモテるのか、なんてふと思ったりしてね。それじゃちょっと見習おうかななんてね。なんだそりゃ貴様、みたいなね。