ご自由に

 わりと住宅街に住んでいるんだけど、時々「ご自由にお持ち帰り下さい」てな感じで、軒先に小さなダンボール箱を出している民家を見かける。中身といえば様々で、古本であったり、花であったり、はたまた(決して高価ではないと思うが)アクセサリー類であったりする。また、それとは少し違うけども、手塩にかけた花々を誰かに見せてやりたいのだろう、「どうぞご自由にお入り下さい」なんつって、庭への出入りを促す張り紙をしている家もある。初めは驚いたものだ。故郷の近所では、知る限り、そうした風習(?)はなかった。
 考えようによっては、東京のせせこましい住宅街ならではの文化ではないかと思う。自宅前の通行人を、「見知ったどこかの誰か」と想定していないからこそ、そのような形でのお裾分け思考になるのではないか。濃密なご近所付き合いのある田舎であったら、そうした、捉えようによってはドライな方法を取ることは少ないだろう。
 どちらが良いなんてことはないけども、東京の住宅街ではちょっと小粋な行為も、田舎にいけばクローズドで無味乾燥なものとして、180°違った受け取られ方をされるかも知れないなぁと。いまだに東京のお客さん感が完全に抜けない俺だけど、その意味では、都会の軽さを心地よく感じる部分があるのは否めない。